渋谷聖公会聖ミカエル教会 パトリック 山田益男

日本聖公会の教会においては、働き人は聖職であって、信徒は聖職に養われる存在として受動的な立場をとってきた。聖職の数が減少し、定住牧師が不在の状況下で起きている現象をみてみれば、
1.聖公会が大事にしてきた主日の聖餐式が維持できない。
2.中心にいて信徒達の結びつきを担ってきたキーパーソンが不在のため、信徒の動向が
つかめず、信徒の交わりが疎遠となりがちになる。(高齢者/病者の訪問など)
3.平日教会を訪れる人をはじめとする求道者への対応、洗礼への準備が行き届かない。
4.教会事務(教籍簿の記載・管理、礼拝日誌の記録、統計表の記載等)を担う者がいない
ため、管理牧師に過度の負担をかけている。
この状況の解決策を検討するため、2023年のヒルダ・ミッシェル信徒講座(渋谷聖公会聖ミカエル教会主催)では新たな働き人として特任聖職、信徒奉仕職を想定しつつ受講者と共に考える企画を行った。この問題は教区を超えて深刻な問題であるため、東京教区だけでなく沖縄教区、九州教区、東北教区からの受講参加者があった。
日本聖公会では専業聖職の補佐役として特任聖職と信徒奉事者という奉仕者を以前から考えてきた。特任聖職については1994年に出された「日本聖公会の現状及び将来に関する主教会の見解」で触れられ、特任聖職には熟年信徒になってもらい、牧師とのチームミニストリーを機能させることが想定されている。しかし、その見解には具体的な推進策が示されていなかったことと、当時はまだ、一教会一牧師体制がそれなりに機能していた時であり、信徒は聖職に養われる存在という意識が教会内に浸透していたためその提言が実現されるケースはまれであった。また、信徒奉事者については法規によって「礼拝において、牧師に協力する。」と定められていることから、限定的に理解されることが多く、外国の lay readerのような幅広い奉仕と異なり、礼拝における奉仕にとどめられ、教会活動の奉仕者として機能していない感がある。
しかし、信徒の高齢化、聖職者の減少、教会財政のひっ迫がここまで進み、教会の存続に危機感を覚える状態になった今、専業聖職ばかりに頼ることなく、新たな働き人を養成することは教会の喫緊の課題であるといえよう。上記したような教会の窮状を改善し、活性化を図る方策としては、1)教会組織の変革と2)新たな働き人の養成をセットで考えることが必須と思われので、ここに具体策を提案したい。これが最善策というつもりは毛頭ないが、これをたたき台にしていただき、各教区において教会の現場が直面している現状に注目し、聖職・信徒皆が本気でこの問題を考えて頂きたいと願うものである。

1. 教会組織の変革
 1教会に1牧師という体制が崩壊し、一人の専業聖職が複数の教会の牧会を担わなければならない現状では、複数の教会をグループ化(教会群)し、管理せざるを得ないが、一人の聖職がすべての教会のミニストリーを担うことは無理であるから、その教会群を一人の専業聖職を中心に新たな働き人を加えたチームで運営することが必要となろう。人が教会に集まらなくなったという現象は日本に限らず、キリスト教国といわれてきた欧米の国でも世俗化の流れの中、若者の教会離れが顕著となって同様の現象が起きている。英国でもその対策として複数のパリッシュをグループ化し、専業聖職と退職聖職に特任聖職とlay readerを加えたチーム・ミニストリーとして協働していることがジョン・リーズ著「自給している聖職者たち」の中で紹介されている。(註1)
註1:ヒルダ・ミッシェル叢書2「自給している聖職者たち」第11章P.197~P.200

教会群構想(教区組織図参照)
 各教会が機能するようにと教会群レベルで体制を整えようとするとき、この教会群が専業聖職の牧会の下にある一つの教会機能を備えたものと捉えることが妥当であろう。専業聖職は1教会に定住するとしても当該教会専属の牧師ではなく、教会群の司牧者としての立場をとる。この専業聖職に全教会の牧会を直接担っていただくのは無理であるから、各個教会にはあらたな働き人として所属する信徒の状況を一番把握している信徒に「牧会補助者」となってもらい、牧師の補佐役を担ってもらう。牧会補助者には信徒の現状を記した信徒原簿(教籍簿に準じたもの)を整備・管理する役割を果たしてもらう。この信徒原簿は元牧師や他の信徒等の協力を得て牧会補助者が作成するものとし、その記述内容は以下に示す。以後、牧会補助者は教会信徒の動向に目を配り、変更事項を訂正加筆し、原簿を維持管理する責を負う。
 信徒に牧会的対応が必要と感じたときは、教会群会議の場で、当該教会の牧会補助者が当該信徒の信徒原簿情報を会議のメンバーに提示するとともに状況を説明し、牧会対応を協議し、役割を決めて実行に移す。


教会群会議
 教会群組織を機能させるために教会群会議を設置する。開催は教会委員会よりも頻繁に月2回程度とする。会議の構成メンバーは、教会群に所属する専業聖職と協働している退職聖職、特任聖職そして各個教会の牧会補助者(信徒奉仕職)で構成する。この会議では上記の牧会対応のほか、各個教会の活動情報の共有と教会群レベルでの活動の企画を担う。各教会の状況を把握しているのは牧会補助者で、教会群の働きの基礎となるので、教会群を機能させるためには、まず補助牧会者の養成が急務となろう。

教会群代表者会議
 将来、宣教協働区の中で教区の統合がすすみ、教区規模が大きくなれば、一人の主教が全教会の状況を把握することはより難しくなるであろうから、中間管理者を担う教会群代表者を立ててその方々の会議を設置し、主教の教区運営・牧会を支援する必要があろう。規模の大きい外国の教区では教区主教のほか補佐主教やアーチディーコンといった教区行政を担うスタッフが揃っているが、日本聖公会ではその体制をとることは難しいと思われるので、教会群代表という中間管理者を想定した。教区主教は教会群代表から各教会群の状況の報告を受ける教会群代表者会議をもつものとし、その会議の構成メンバーは、教区主教と各教会群の代表者(常置委員長や教区事務所総主事の参加も要検討)で構成する。この会議は決議機関ではなく教区全体の状況を共有する機能を担う。


信徒原簿
 牧会補助者が管理する信徒情報を記録する原簿で、教籍簿に準じるものであるが、信徒原簿の記載事項は、氏名、洗礼名、生年月日、住所、電話番号、メールアドレス、教父母名、家族構成、受洗日、按手日、信徒情報(現在堅信受領者/洗礼のみ/不参堅信受領者等)、備考に健康状態や家族の情報など特記事項を記載。少なくとも教会と連絡がついている現在信徒についてこのデータを整備しておく。この奉仕は個人情報を扱い管理するものであるため、守秘義務を負うことになる。従って、それを扱う牧会補助者は自らが志願したボランティアではなく、教区主教から委嘱された信徒奉仕職であることが必要であろう。

2.教会群を機能させる新たな働き人を加えたチームミニストリー
 複数の教会をまとめた教会群単位での教会活動を担うため、現在の専業聖職と退職司祭に新たな働き人として特任聖職と信徒奉仕職を加えたチームミニストリーを想定するが、現在のところ、特任聖職と信徒奉仕職が育っているわけではない。まず、教区は新たな奉仕職にどのような働きを任せ、その担い手をどのようにして養成するか各教区の状況を踏まえて、神学校と協議するなどしてその育成システムを検討する必要があろう。また、教会群をまとめる牧師は原則専任聖職がよいとして、礼拝、信徒の牧会、外部宣教の分野について新たな奉仕職を整え、チームとしてその任をどのように分担するかを検討する必要があろう。
1)礼拝については聖餐式、葬儀、結婚式などは聖職の仕事であるから、専業聖職、退職聖職そして特任聖職が各教会を巡回するなど礼拝について分担を考えるようにする。主日に聖職がおらず「み言葉の礼拝」となる教会では信徒奉仕職が司式と勧話を担当する。この信徒奉仕職は牧会補助者に限定されるものではなく、この他多様な奉仕を行う信徒の奉仕者が多く育つことが望ましい。主日にはみ言葉を聞き、聖餐に与ることを信徒たちが切望していることを考慮すれば、まずは特任執事を育てることが有効であり、現実的であろう。執事職が育てば「み言葉の礼拝」での説教が担えるし、リザーブドサクラメントを用いての陪餐が可能となる。これがかなうことは定住牧師がいない教会にとって大きな恵みとなる。
2)教会群単位での信徒の牧会については、信徒の状況を一番把握している信徒に牧会補助者となってもらい、他の信徒の協力を得ながら信徒の状況を把握し、牧師と密に連携してもらい、対応が必要となったときはそれを教会群会議で共有するとともに、誰がどのように対応するかを協議する。まずはこの牧会補助者の育成が肝要となるため、早急に日本聖公会として牧会補助者の役割について共通理解を得るとともに、各教区は牧会補助者として必要な素養を備えるための養成システムを整えることに着手していただきたい。
3)外部宣教については、今までも対応が十分であったとは言い難い分野であるが、社会にあって教会が教会としての役割を担うために、最も体質改善が求められるところといえる。現代社会に生きる若者たちに福音メッセージを届けるためには、従来のような教会が一方的に教理を発信する信徒獲得運動ではなく、現代人の価値観に沿ってメッセージを発し、世の中で生き難くされている人々に寄り添い、各自が神様につながれることによって誰もが安心して共に生きられる社会を形成する活動を展開する必要があろう。人材不足や経済的理由から当初教会活動の補佐役として求められ誕生した英国の特任聖職達が、平日の職場での同僚達へのケアーに目覚め、今ではむしろその領域でのミニストリーに召命を感じているという報告は、現代社会における宣教のあり方を示唆しているように思われる。英国では教会生活をしていない人でも聖職の働きに対する理解があり、職場に聖職がいれば頼りにするようだ。日本ではそれはないが、人の話を聴くことができ、生き難くされている人に寄り添う働きは同じように求められるはず。そのような訓練を受けた者であれば、必ずしも聖職でなくてもよいと思う。まずは人が神様と出会う場所は教会だけではないということ、キリスト者は隣人に寄り添うものとの意識改革を図るとともに、生き方の姿勢を整える信徒教育を準備する必要があろう。

3. 特任聖職と信徒奉仕職の育成
 チーム・ミニストリーを担う特任聖職と信徒奉仕職をどのようにして育成するかを考えたい。現在聖公会神学院では本科のほかに「特任聖職特別コース」と「信徒の奉仕職・召命コース」が、ウイリアムス神学館では伝道師養成、「信徒の奉仕職」養成等のカリキュラムが準備されている。聖公会神学院のこの二つのコースは2023年からwebによるオンデマンド形式としたことで、自宅で時間の取れるときに学べるため、信徒の受講可能性が大いに高くなった。仕事を持っている信徒には神学校での寮生活は無理である。カリキュラムは聖書学、教理学、教会史、礼拝学、牧会学、聖公会論と本科の学科に準じたものとなっている。特任といえども司祭職は司祭職、執事職は執事職であるから、それなりの素養を養わなければならないという意図は十分に理解するが、広く働き人を養成することが求まれている現状を考えるとき、これはいささかハードルが高いと思われる。専業聖職は総合職として司祭職のすべてを担うことが求められるが、いま、教会の現場が最も必要としている主日の説教と聖餐を可能にし、信徒の交わりを回復させるキーパ-ソンを得るためにはその働きに特定した専門職としての聖職を養成してもよいのではないか。礼拝、聖書、牧会、求道者対応すべての分野で聖職として働きを担う人の育成は容易ではないことから、礼拝・説教を担う者、洗礼準備ができる求道者対応奉仕者、他者の話を聴ける牧会カウンセラーなど担当分野を特定した奉仕者がいてもよいのではないか。一教会一牧師体制の中では牧師は総合職としてオールラウンドでの対応が求められるが、チームミニストリー体制であれば、各自が自分にできることを分担し、協働することが可能となるはずである。平信徒である私が教会の伝統を軽んじて乱暴なことを言うとのお叱りを受けることを覚悟しつつ、主教様方には神学者達の意見を聞きながら三聖職位を堅持してきた教会としてこのことの是非を検討して頂きたい。
次に、特任聖職とならなくてもできる信徒奉仕職としての奉仕について考えたい。教会の働きは多様であり、サクラメントの執行など聖職者でなければできないこともあるが、信徒にもできることは無限にあるといっても過言ではない。今までは教会における仕事の多くを聖職者に依存してきた。教籍簿の記載や管理、礼拝日誌の記帳や統計表のまとめと記載のみならず、週報の作成までも教会事務は牧師にお任せであった教会が多いのではないか。勿論教籍簿の内容は個人情報に関するものであるため、誰もが勝手に手に触れてよいものではなく、奉仕者は研修を受け、守秘義務も負わなければならないが、牧師の監督下であれば決して信徒がしてはならないものではないといえよう。
洗礼を受け、信徒となった者はキリストの体につながれた存在であるから、体の一部として何らかの役割を担う者であるという自覚をまず持つことが大事であろう。そもそも堅信を受けるということは聖霊の導きの下で、共同体での責任的役割を担うということであるはず。自分はどのような働きを担おうか、何が担えるかを各自が祈りのうちに神様に問う必要があるであろう。牧会補助者として奉仕するとか、社会的弱者に寄り添う奉仕とか、教会事務を担うとか、オールターギルドの仕事とか、教会の留守番を引き受けるとかはハードルが高いと思われる方もおられようが、教会の奉仕は多様である。教会行事の案内を印刷し発送する作業とか、教会施設の清掃とか、特別な技能がなくてもできる奉仕もあるし、体力に自信がなく、礼拝出席が難しい方であっても、代祷表にそっての代祷奉仕など祈りの奉仕はできるはず。
 現在聖公会神学院の「信徒の奉仕・召命コース」では従来の伝道師の働きを想定して基礎神学を学ぶカリキュラムが組まれているようである。神学教育専門機関である神学校としては当然とも思われるが、もっと現場の教会のニーズに沿って教会事務の習得や、礼拝の準備や礼拝の司式を担う奉仕者、求道者対応や洗礼準備の任が担えるようになど信徒を育成する教育プログラムを各教区で準備していただきたい。例えば教会の現場のニーズに沿って、オールターギルドの講習や、教籍簿や礼拝日誌、教会統計などを含む教会事務についての講座など、教区で充実させていただくことも有効かと思われる。
いままで、すべてを聖職者に依存してきた信徒たちが、教会の働き人としての意識に目覚めて活動を開始すれば、将来大きな可能性が生じるものと明るい希望も見えてくる。

 今年のヒルダ・ミッシェル信徒講座に参加してくださった方々は、牧師中心の教会体制が崩壊しつつある状況の中で、自分達信徒にできることは何かを一生懸命に考え、祈っておられることが強く感じられた。少数とはいえ、このような気持ちの信徒が日本の各地にいるということは大きな希望につながるといえよう。専業聖職と特任聖職そして働き人としての信徒奉仕職からなる構成、さらには全員参加のチームミニストリーを機能させて現代社会にある教会として機能する「明日の教会」の形成につなげたいと願うものである。

以上