
イエス・キリストは歴史上実在した人間なの?

イエスをキリストと認めないユダヤ人が書いた文書の一つに、「イエスの兄弟ヤコブ」への言及があります。ローマの歴史家の中にも「キリスト」にあやかり、自分たちを「キリスト教徒」と呼ぶ人々がいたこと、「キリスト」と呼ばれたイエスはピラトによって処刑されたと述べている人がいます。このローマの文書については真偽が議論されていますが、イエスは実在しなかったという文書は見つかっていません。
イエスについての最も重要な資料は新約聖書の四つの福音書です。福音書は紀元後1世紀の初めにイスラエルの地で「イエスが何を語り、何を行ったか」を書いています。しかし「福音書」という文学ジャンルは伝記や記録ではなく、著者の信仰を通して見たイエスが述べられているため、四つの福音書の内容は完全に一致しているわけではありません。それでも、福音書の叙述を整理していく中で、かすかにではあっても歴史上のイエスの姿を見ることができます。

歴史上存在したかどうかという点では、ナザレのイエスという男性が紀元前にベツレヘムで生まれ、宣教活動をしていたということは確認できています。
新約聖書を読んでいると、イエス・キリストが行った奇跡が果たして本当なのか、そもそもイエス・キリスト自体が実在の人物なのかと感じられることでしょう。
新約聖書の4つの福音書には、イエスの生涯が詳細に記されているものの、それぞれの記述に違いがあったりすることで余計に本当のところはどうなのと感じてしまいます。
一方で、キリスト教に関する資料や信仰とは少し離れて、歴史的な視点からイエスの存在、すなわち「史的イエス」を解明していこうとする学問も存在しています。
この研究資料には、ユダヤ人の資料やローマ人の資料などが存在し、福音書と合わせて検証に役立てられています。とはいえ、史的イエス研究は進んでいるものの、研究者間での解釈の違いや宗教的議論が続いているのが現状です。
それでも、イエスという人物が語り、伝えてきた言葉は数千年が経過した現代まで「聖書」という書物によって受け継がれ、多くの人々を癒し、勇気づけてきたことは変わらない事実といえるでしょう。
以上のようにイエス・キリストは歴史上実在した人間であったことを証明する文献は存在しますが、キリスト者はイエス・キリストが歴史上実在したかどうかより、神の愛と恵みを実践し小さくされた人々と共におられたイエス・キリストの心が今それぞれの心の中に生きているかを大事にします。